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ツキノワグマの飼育管理: エンリッチメント

Animals Asia Foundation
ツキノワグマの飼育管理: エンリッチメント より抜粋

エンリッチメントとは?

環境エンリッチメントとは、動物が本来持つ行動や能力を引き出す刺激を与え、飼育下の動物の福祉を増進する取り組みのことを言います。野生動物は環境刺激を受けて、特定の行動をとります。飼育下の動物がこれらの行動をとるためには、同様な刺激が得られる環境が必要です。例えば、野生のクマは多くの時間を採食行動(餌を探索、採る、食べる)に費やしています。しかし、飼育下の動物は必要な栄養を含んだ餌がすぐ手に入り、残りの時間を退屈に過ごすことがストレスの原因となっています。エンリッチメントとはただ単に動物が遊べる環境を与えるだけではなく、動物が本来持つ行動をとれる環境を作ることであり、動物の福祉を考える上で非常に重要なことです。
 

なぜエンリッチメントは必要か?

■飼育動物に対する’1979年にイギリスの家畜福祉協議会(FAWC)が確立した動物の福祉基準「5つの自由(解放)」’をある程度実現できます。
■飼育動物が正常な行動を表現できるようにし、動物の生活は有意に改善され、恐怖や不安、不快、外傷、疾病も緩和されます。
■刺激のない環境から退屈な時間を過ごす動物によく見られる「行ったり来たりを繰り返す」「柵や体を舐め続ける」等の常同行動を軽減します。
■飼育員と動物の絆を深めます。
■動物がより自然な行動を表現できるようにします。動物の本来の行動や姿を見た人々は楽しむことができ、関心も高まると同時に教育にも役立ちます。
■エンリッチメントは動物の飼育する上で「オプションサービス」として考えられるべきではありません。エンリッチメントは適切な餌、新鮮な水、健康管理の供給とともに最も重要な部分です。また、一般に公開される動物だけではなく、全ての動物に対して与えられるべきです。
 

エンリッチメントの種類は?

エンリッチメント計画は、行動エンリッチメントと環境エンリッチメントの2種類から考案されるべきです。各エンリッチメントにはさまざまな形がありますが、基本は以下のカテゴリーに分類されます。
空間
巣穴、運動場所、環境等動物の周囲全てを含みます。丸太、枠組み、プール、穴、ヌタ場等は、クマが本来得意とする行動(木登り、泳ぎ)を引き出し、退屈にならないように刺激を与えます。 
感覚
クマの五感、特に最も発達した嗅覚をエンリッチメントで刺激します。
嗅覚(匂い)-ハーブ、エッセンシャルオイル
聴覚(音)-ジャングルの音や穏やかな音楽
触覚(タッチ)-花、草、マット等
味覚-バターやジャム、シロップ等
視覚-高い足場を作る、鏡を置く
新奇のもの
クマが興味を持ち遊ぶことのできるもの与えれば退屈にならずにすみます。
自然物-竹、丸太、木の切り株
人工物-遊具、ロープ、ボール、浮き輪等
摂取の工夫
長時間費やして餌を探すという本来の採食行動を行えるよう、餌を隠す、ばら撒く、隠す等の工夫をします。
社会性
相性が良い動物を一緒にし、群れを作らせます。
オペラント条件づけトレーニング
陽性強化法(クマが喜ぶ報酬)を使い、クマと飼育員の交流方法をコントロールします。
 

どのエンリッチメントが必要か?

効果的なエンリッチメントの取り組みには、その種の自然生物学や本来持つ行動をできる限り理解する必要があります。特定の動物の経歴や病歴の知識も必ず必要です。
 
 
工夫された環境エンリッチメントからクマは恩恵を得ることができ、飼育員との絆も深まり、野生に近い自然な動物の姿を見た観客も楽しめます。ここで述べたエンリッチメントはツキノワグマだけではなく、他の種類のクマや動物にも適用します。

翻訳協力:西澤ローリ/モンティア貴恵


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